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「ん……二木さん?」 ぼんやりとした光に眼瞼を上げると、そこには先日ルームメイトになった少女が机に向かっていた。 「能美さん……起こしてしまったみたいね。ごめんなさい」 「だいじょうぶなのです。なんかのども渇いてましたし」 「そう」 「二木さんはお勉強ですか?」 「復習と予習よ」 「流石ですね」 「別に……いつもやる癖が付いてるから」 「すごいですね」 「そんなことないわよ」 「いえいえ。毎日続けることはとても大変なことですから」 「何か飲むんじゃなかったの?」 「わふ〜そうでした」 「まったく……」 苦笑しながら紡がれた言葉には別の色も混じっていて…… 「あ……」 いつもとは違う優しい雰囲気の瞳に鼓動がはねる。 「どうかしたの?」 いぶかしげにこちらを見られ、あわてて踵を返す。 「なんでもないのです。きっちんへれっつごーなのです」 ◇ 飲み物を持ってくると出て行ったルームメイト。 ポットとともに持って来たのは…… 「あの……よかったらこれを……」 目に入ったのはサンドイッチ。 「私は別に……」 「頭を使うとおなかがすきますよ」 中身からするとBLTサンドだろう。 厚意でいってくれているのは分かるが…… 「いらないわ」 「そうですか……」 しゅんとうなだれる、そんな姿はどことなく子犬を思わせて…… 「……お茶だけいただくわ」 「は、はい!」 カップを受け取り、一口含むとリーフの香りととかすかな渋みが広がる。 「優しい香りね」 「アッサムのふぁーすとふらっしゅです。アッサムはミルクティーが有名ですが、ストレートでも良いのですよ」 リーフの説明するその姿はとても嬉しそうで。 「おいしいわ。ありがとう」 するりと紡がれた言葉に自分でも驚く。 「あ……」 「能美さん?」 「な、なんでもないのです」 なにを慌てているのだろう。 「もう休んだら?」 「そうですね……二木さんは?」 「私はもう一問解いたら休むわ」 「そうですか。では、お休みなさいです」 「お休み」 一週間後。 定期考査の試験日程が発表され、あわただしくなってきた。 日々の予習復習をしていても、試験ばかりは一回勝負。 手を抜くわけにはいかない。 だって……そんなことをしたら…… 「あ、あの……」 「何か用?」 参考書から顔を上げずに答える。 「ちょっと休憩されてはどうですか?」 控えめにかけられた声。 「……それもそうね」 時計を見るといつも間にか2時間ほど経っていた。 参考書にノートをはさみ、大きく伸びをして固まった身体をほぐした。 「お茶を入れたのでどうぞです」 いつの間にか、お茶を入れてもらうのが日課になっていることに気がつく。 ルームメイトが淹れるお茶は緑茶、紅茶を問わずどれもおいしい。 そして、どこかほっとするのは……淹れた人の雰囲気も入っているからだろうかと考える自分に苦笑する。 「えっと……それとこれを……」 「これって……」 目の前に出されたものに目を見開く。 「これなら消化も良いですし、栄養のバランスも良いのです」 ニンジンやピーマン、ベーコンが一口大に切られ、パスタと一緒にケチャップでいらめられたもの。 喫茶店での定番メニューであるナポリタン。 「なんでこれにしようと思ったの?」 「それは……その……」 「ん?」 「前に食堂で食べていらっしゃったのを見たので」 確かに食べたことはあったが、なぜここにあるのかつかめずにいると。 「そのとき、すごくおいしそうに食べていらっしゃったので、好きなんじゃないかな……と思いまして」 「っ」 ルームメイトの指摘に赤面する。 「ち、ちがいましたか?」 素直に答える事が出来ずに一口食べる。 「おいしい」 食堂での味とは少し違うが、これはこれでおいしい。 ![]() 「気に入っていただけてよかったです」 すごく嬉しそうにするルームメイト。 くるくると変わる表情。 人のことばかり気にして……なんてお人よしなんだろう。 自分も人のことをいえた義理ではないということに気がつき苦笑する。 「……た……い」 「二木さん?」 「佳奈多」 「え?」 「ルームメイトなんだし、呼び捨てでいいわ。苗字で呼ばれるのは、あまり好きじゃないから」 「かなた……さん?」 「だから……まぁ、クドリャフカが呼びやすいなら」 「わふ〜」 「ちょ、ちょっと。クドリャフカ!?」 子犬のように飛びつかれる。 どうしたものかと思っていたら…… 「これからもよろしくお願いしますね、佳奈多さん」 「よろしく。クドリャフカ」 その後、風紀委員長のそばにいる仔犬が増えたそうな。 どっとはらい。 & Strollway.・Hinase Meguru All rights reserved. |
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