ここはどこなのだろう。
 穏やかな空気が流れる、あたたかな場所……
 なにより……やすらぐのは
 近くにあるぬくもりと、香り。
「……は」
 ここは……
「ん……」
「……のは」
 そうか……ここは……
「みゅ?」
 まだ重いまぶたを持ち上げると。
 視界に入ったのは、鮮やかな金色と優しげな光を宿す紅。

「なのは」

 あたたかくやさしい声で名前を呼ぶのは……
 夢の中にいた人。


    ◇


 休みが重なったのは、随分と久しぶりで。
 一緒に出かけようと話していたけれど、あいにくの空模様だったので家にいることにした。
 ソファに座って一緒に雑誌を見ていたら、ふいに肩に感じた重みとぬくもり。
「なのは?」
 心配になり顔を覗き込むと、穏やかな寝顔が見え苦笑する。 
 このままでは風邪を引いてしまうと思いベッドへ運ぼうとするけれど、
しっかりと私のシャツの袖を握っているその手に、頬がゆるむ。
 腕を伸ばして隣に置いておいたカーディガンを引き寄せると、そっとその肩にかける。

「なのは」
 唇から零れたのは君の名前。
「なのは」
 口にするだけであたたかくなる……
「なのは」
 魔法の言葉…………


「フェイト……ちゃん?」
 うっすらと上げられた眼瞼からのぞくのは、私の大好きな蒼。 
「大丈夫?」
 一応聞いてみるけれど。
「ん〜?」
 どうやらまだ頭が回っていない様子に苦笑する。
「もう少し寝てる?」
「……うん」
 幼子のように頷く仕草に頬がゆるむ。
「寄りかかって良いから」
「ありがと……」
 ゆらゆら揺れていた頭が、ほすりと膝の上に載せられた。
「え?」
「こっちの方が……いい」
 背中を丸め、膝に擦り寄っている姿はどこか猫を思わせる。
「今日は甘えただね」
 そっと髪をすくように撫でると、少しくすぐったそうに身をよじる。
「だめ?」
 普段は見せない、そんな姿が愛しくて。
「いいよ」
 それはきっと……
 私だけに見せてくれるものだから。
「その方が嬉しい」
 思わず本音が漏れる。
「フェイト……ちゃん?」
「なんでもないよ」

 ぽんぽんと背中を撫でると、再び寝息が聞こえてきた。

「おやすみ、なのは」

 こちらに背中を向けて眠る君の寝顔は見えないけれど、
 いつもより少し高い体温が愛しい。

 緩やかなメロディーを口ずさむ。
 疲れた愛しい君が、良い夢みれますようにと思いながら……


Fin


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