資料を探しに向かった無限書庫。
 そこで見つけたのは翠と紅の瞳の少女。
 真剣にいくつもの本を読みふける姿は、懐かしいものと重なって……
 気付くと、声をかけていた。 

  + 本局内 無限書庫。

「お、こないなところで会うなんて珍しいな」
「あ、はやてさん! お久しぶりです」
 軽く右手を挙げて挨拶すると、嬉しそうに返事をしてくれた。
「なんやティアナとかになんか頼まれたん?」
 無限書庫司書の資格をもつ彼女に、仕事を頼む者も何人かいる。
 もっとも、勉学に支障が出ない範囲で……という母親が出した条件を守るのが約束。
 それを破ったら……きっと母親と『お話』をすることになるんやろうな。
 私はそんな趣味あらへんけど。
「そうじゃないんですけど、学校の宿題が出てて」
「無限書庫を使うような難しいものなんて、そうそうないと思うんやけど……」
「えっと、学校の図書館で一応終わったんですけど、ちょっと調べたら面白くなっちゃって……」
 幼い頃、本を読み出したときに知った、もっと先を知りたいという感覚。
 本を読むことで、まるで自分が体験したように思えるその感覚が楽しくて、ついつい夜更かしをして読んでしまったことを思い出す。
 でも、授業中が眠くて仕方なかったなと苦笑する。
 決まって、そう言うときには幼なじみの面々に心配をされた。
「勉強熱心なんやな」
 ひたむきな姿が、幼なじみとかぶる。
「そ、そんなことないですよ」
 慌てる姿が可愛くて、思わずくしゃりと頭を撫でる。
「は、はやてさん!?」
「いや〜ほんまにええこやな〜」
「も、もぅ。はやてさん?」
 驚くけれど、その手をのけようとはしない。
 少し照れている姿は年相応で、思わず頬がゆるむ。
「面白いゆうんはようわかるけど、無理したらあかんよ」
 でも、頑張りすぎるところまでは似て欲しくない。
「そんなこといったら、はやてさんだって、忙しいじゃないですか」
「まぁ、仕事やからな〜って、それとコレとは別やで」
 思わぬ反撃に苦笑する。
 だから……
「なぁ、ヴィヴィオ。今日は何日か知っとる?」
「え、今日ですか? えっと……10月31日ですよね」
 突然の私の質問に、律儀に答えてくれるヴィヴィオ。
「せや、そして私やなのはちゃんの住んでた世界では、あることをする日でもあるや。さてそれはなんでしょう」
「ん……と……」
 真剣に考え込む少女に、ヒントを出すことにする。
「ヒント1。カボチャが関係します」
「え……っと」
「ヒント2。子供達が仮装をして、家を回ってお菓子とかをもらったりします」
「あ!」
 ぱっと明るくなる表情。
「答えは?」
「ハロウィン!」
「せや。ほな、その時に子供が言う合い言葉は?」
「トリック オア トリート!」
「うん。大正解や」
 その答えに満足すると、くしゃりと頭を撫でる。
「ほな、そんな頑張り屋さんにはこれをあげような」
 頭を撫でる手はそのままに、もう一方の手をポケットに入れてある物を取り出し、ヴィヴィオの掌に載せる。
「これって……あめ?」
 渡された物を見てきょとんとする仕草は、彼女の母親と同じで何ともほおえましい。
 ヴィヴィオの掌に載せたのは、数個のキャンディーの袋。
「ブルーベリーゆうてな、私やなのはちゃんの世界で目にええっていうものなんよ」
「へーそうなんですか」
「あんまり夢中になりすぎて、目近くしたらあかんよ」
「き、気をつけます」
 苦笑しながら返すところを見ると、どうも誰かに注意されたことがあるようだ。
 おおかた心配性な母親や、世話焼きな友達にでも言われたのだろう。
 そんな光景が思い浮かび、目が細まる。
 ……と、ポケットに入れてある端末が震えた。
 とりだすと、画面には会議の開始時刻が近いことを知らせていた。
「おっと、時間やな。ほな、ほどほどにするんやで」
 最後にくしゃりと撫でると、踵を返して外へと向かう。
「は、はい。ありがとうございます」
 少しの間の後、背中越しに聞こえてきた声がちょっとうわずっていたような気がしたのは……
 気のせいだったんやろうか?
 首をかしげつつも、無限書庫を後にした。

 書庫で出会った少女に気を取られて、必要な書類の検索を忘れたことに気が付いた時、
補佐官であるデバイスが呆れ顔になったのは……また別のお話。

  ◇

 課題で出されていたのは、いろんな意味を持つ物について調べるという物。
「こんな意味があるんだ」
 私が調べることにしたのは、お花に付いている意味。
 どうしてそれにしたのかというと、前になのはママとフェイトママが話していたのを聞いて、興味があったから。
 本の中にあることが書かれていることを見つけ、目を丸くする。
「これって……」

 深い意味なんてないと分かっていても、おもわず頬がゆるむ。
「なんか、はやてさんらしいや」
 パタンと本を閉じて元の場所に戻すと、書庫を後にする。

 ポケットに入れてある、あめの袋がかさりと音を立てた。


ブルーベリー
■花言葉■
信頼 思いやり・親切 ・好意







リリマジのお礼にこっそり小話を送ったら、この企画にお呼ばれしてしまいました。
自分なんかが……いいのでしょうか(汗
そんなことを思いつつ、書かせて頂きました。
まぁ、お二人とも気付いていない……という相変わらずな感じなモノになりましたが(苦笑

「あ〜もう、この二人は!」とか思って頂けると幸いです。


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