すないぱーのきゅうじつ。


 仕事も入っていない日は久しぶりだ。
 寮のテラスでのんびりとしている。   
 机の上にいくつも金属の固まりがあるのは、分解掃除をしているから。
 雲一つない晴天。
 こんな日は草原でのんびりと子犬と戯れるか、あんみつでもつつきたいものだ。
 そんなことを考えながら、手は機械的に掃除を続けていく。
 さて、これが終わったら何をしよう。
 つーっと汗が流れる。
 春らしい陽気とはいえ、日差しを遮るものがないとさすがに暑い。
 少しくらい風が吹いてもいいんじゃないか。
 そんなことを思いながら、ガチャリと最後のパーツを組み込んだ相棒をハーネスに戻す。
 そうそうこんな風に雲が出ても……

 ……影?

 雲がないのはずいぶん前から知っている。
 となると……
 これでも、『仕事』をしている身。
 いくら何でも、こんな至近距離で気配に気づかないわけがない。

 掃除を終えた銃を抜き放つ。
 見上げると、そこには人一人分の質量があった。
 虚空に広がる布と……
 それを確認して、かまわずトリガーを引いた。

 タ――ン

 銃声と広がる硝煙。


 ざっ





 一対の光がきらめいたかと思うと、一つ大きく翻る影。
 放たれた弾丸は、目標に当たることなく布の中に消えた。

「人に向けて撃つのは、危ないでござるよ」
「いきなり現れる方が悪い」

 虚空から現れたのは、忍び装束の少女ににべもなく言い放つ。

「これは使い方がなかなか難しいのでござるよ、去れ」

 ひらりとはためかせた布が、カードへと戻る。
 なんのことはない、彼女アーティファクトである天狗之隠蓑から現れたらしい。

「それよりも……拙者だとわかってから撃ったでござろう?」
「さぁ、どうだろうな」
「まったく……おぬしときたら」

 とりあえず、この状況下でとるべき行動はひとつ。

「とりあえず……楓にはあんみつでもおごってもらおう」
「なぜ拙者が」
「すがすがしい休日を台無しにしたお前に、拒否権はない」
「わかったでござる」

 ため息をつきながら肩を落とすクラスメイトに、独り言を紡ぐ。

「そうそう、学食で新しいデザートが増えたらしい」
「ほう……さようでござったか」
「なんでも数量限定で特大サイズのプリンがあるとか……」

 風が流れ、髪がなびく。

「何をしてるでござる、急ぐでござる!」

 好物の情報に表情と空気が変わった忍びが、先を歩いていた。
 走ってはいないが、競歩よりもはやいそれに苦笑。

「あぁ、わかった」

 食堂へと向かった。


 そのあと、食堂で満足そうな顔で机に突っ伏するスナイパーと忍びの姿が見られたそうな。

 どっとはらい。







マッチさんの線画をクロスペイントさせいていただきました。
マッチさんのイラストを見ていたら……
はっと気づいたらこんなものが←
ありがとうございました!

2010.03.11


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