お題は
「ぬこじゅーぞく」、「はがしちゃだめ」
気づいたらこんなものが……
ゆるゆるとリハビリがてらにかりかり。






 外出にもなれ、いろんなところに行くようになった獣族。
 元気に遊び回るのはうれしいけれど、たまに怪我をしてくることも……
 怪我はそんなに深い物じゃないけど、今回は場所が顔。
 その獣族には、ある癖があるだけにやっぱり心配で……授業が終わると慌てて家へと戻る。

「ただいま……」

 鍵を開け帰宅を告げるけれど、何も起こらない。
 昼寝でもしているのかと、リビングへ向かった。


   ▽ Scab


 リビングに行ってみるとそこにいたのは……
 むぅとした顔をして、額をこする獣族。
 その姿に慌てて、鞄を放り出し駆け寄る。

「なのは、かさぶたはがしちゃだめだよ」
「にゃ〜!」

 そういっても、気になる物は気になるようで、額をこするのをやめない獣族。
 爪が引っかかったのか、かさぶたははがれてしまった。
 はがれたことでまだ現れた痛みに、蒼の中に浮かぶ色が変わる。

「なのは」
「ふかぁ!!」

 再び出てきた紅に、興奮しているのか威嚇された。

「あんまり暴れると、目に入っちゃうよ」
「にゃ〜!!」

 つ……っと一雫、蒼に落ちた紅にますます暴れ出す獣族。
 落ち着けるために、名前を呼んで抱え上げると……

「なのは、っつ」

 のびた爪が腕をひっかいた。
 白い腕からにじむ紅。
 けれど、抱えた獣族は放さない。

 部屋に違う鉄の匂いが広がり、白い耳がへにょりと下がる。

「あ……」

 その匂いが意味するものが分かり、固まる獣族。
 でも、少しずつ肩が震えていって……

「……う……ごめ……んな……さ……」

 ぽろぽろとこぼれる涙が、シャツをぬらす。

「大丈夫。大丈夫だから」

 そういいながら髪をなでると、しゅんと垂れ下がるしっぽ。
 おとなしくなった頃合いを見て、なのはの傷の具合を確かめる。 

「……うん、これならなんとかなるかな」

 幸いかさぶたがはがれただけで、新しく傷はできていない。
 なのはを抱えたまま薬箱を取ると、手当を始める。
 消毒をした後にガーゼを当て、テープでぺたりと押さえた。

「痕がのこっちゃうから……はがしちゃだめだよ」

 そういってくしゃりと髪をなでると、こくりと頷くなのは。
 それを確かめると、そっと掌をガーゼの上に当てた。

「フェイトちゃん?」

 不思議そうに見つめる蒼に微笑む。

「手当っていって、こうしてるとはやくよくなるんだって」
「そう……なんだ」

 すると、そっと腕にのばされた小さな掌。
 そして、すでにかさぶたになったところを一生懸命に押さえた。

「なのは?」 
「……フェイトちゃんも、はやくよくなりますように」

 その言葉に思わず頬がゆるむ。

「ありがとう、なのは」

 髪を梳くようになでると、ゆるゆる揺れる白いしっぽ。
 それを眺めながら、眼を細めた。


 数日後、リビングではガーゼのとれた獣族と戯れる飼い主の姿が見られたそうな。


どっとはらい




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