夜風に当たろうと、ふらりと向かった屋上。
 そこにいたのは、ちょうど出かけるところだったよく知る人。
 少し話すと、その背中を見送る。
 いつもと違うのは……


 コートと雨とぬくもりと


「ほんまに、かなわんな……」 

 別れ際にかけられたコートを握り、引き寄せる。
 貴女の残したぬくもりが逃げないように。

 気づくと、頬を伝う雫。
 いつの間にか降り出した雨。
 雨宿りをする気にもなれず、そのまま立ち尽くす。
 一回り大きい白いコートのおかげか、身体は濡れることはない。
 けれど、髪はそういうわけにはいかなくて。
 前髪を伝った雫が上着をぬらした。


 ふと身体を打っていた雨がなくなる。
 どうしたのかと振り返ると、そこにいたのは傘をさした一番会いたくない人。

「……なんでここにおるん?」
「なにやってるんですかっ」

 そう言うが早いか、手を引かれる。
 ぽすりとあっさり腕の中。

「ちょぉ、なにするん! ぬれるやろっ!」

 コートの内側は濡れていないけれど、外はそうはいかない。
 暴れるけれど、びくともしない囲。
 いつの間にか逆転した身長差が恨めしい。

「……さがしたんですよ」

 すぐそばから聞こえる声。
 いつもはそれほどかわらないけれど、今はあたたかく感じた。

「いろんな所探して、それでもいなくて……やっと見つけたら、こんなに濡れて……本当になにしてるんですか」

 震える肩、上着が濡れる感覚に……

「あ〜もう、なんで泣くん」
「ないてなんか……ないです」

 茶化してしまうのは、生まれつきの性格。
 そして、返ってくるのは相変わらずの意地っ張り。
 これ以上追求すると、やぶ蛇になりかねないので黙ることにする。
 囲は解かれ、腕を引かれた。

「ほら、本当に風邪ひいちゃいますよ」
「たまにはええんやないの?」
「冗談でもそんなこと言わないでください」

 親譲りの心配性に苦笑。
 肩をすくめると、隣を歩く。
 割り当てられている部屋に向かうのだろう。
 ふと、強い視線に気がついた。

「なぁ……なんで、コートにらんでるん?」
「にらんでません」
「だってさっきから……」
「にらんでませんからっ」

 その言葉に、黙るしかなかった。 

「はやてさん」
「ん?」
「今度は『私の』を貸しますね」

 しっかりした補佐官が、見逃すはずがない。
 背中を冷や汗が伝ったのは……気のせいだということにしておいてください。


                        どっとはらい









 相変わらずの突発、手が勝手に……
 一時間くらいなくなってるのは……うん多分気のせいですね←
 矢印がどこに向かっているか?
 それはご想像にお任せします(まてい

2011.07.31


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